2020/07/04

2018年11月3日放送の、NHK・Eテレ“ウワサの保護者会~こどもの心身の不調~”を見た感想です。
見て、出演者の誰も、番組制作者の誰も、“脳脊髄液減少症”とこどもの心身の不調との関係性に気づいていないな、と感じました。
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こどもの心身の不調には脳脊髄液減少症が隠されている場合がある
脳脊髄液減少症はこどもでも大人でも高齢者でもだれでも起こりえる疾患です。特に子供の場合、学校でのスポーツ事故や、椅子引きなどのいじめやふざけ、あるいは運動会での綱引きでのしりもち、鉄棒から落ちて背中を強打する、ブールが首に当たるなどでも起こりえる、と私は思います。
しかし、こども本人はもちろん、親も小児科医も学校の先生も養護教諭も、脳脊髄液減少症の症状をあまり知らない人が多いのが現状で、多くの髄液漏れが原因でのこどもたちが、小児科医によって、別の病名や「不登校」扱いされて、結果的に「髄液漏れ」の治療がされないまま放置されていると私は思います。
そう思う理由を書いてみます。
教育関係者も医師も保護者も“脳脊髄液減少症を知らない”
第一、内科医も小児科医も泌尿器科医も脳脊髄液減少症を知らない人が多いのですから、教育関係者も保護者も脳脊髄液減少症について知らないのが普通でしょう。
出演されていた順天堂大学医学部付属病院・小児科医師の大友儀之さんも、中学校の教員を長くやっていた教育者の尾木直樹さんも、そして保護者も、誰も、「心身の不調の中には脳脊髄液減少症が原因で起こっている症状が隠されていること」を全く知らないのでしょう。
大人たちが脳脊髄液減少症を誰一人疑わない環境の中では、脳脊髄液減少症の対応以外の対応ですまされているのが現状でしょう。
脳脊髄液減少症でも夜間の尿量を減らすホルモンの分泌が少なくなり尿量が増える
これは、内分泌疾患の医師もおそらく知らないことだと思いますが、脳脊髄液減少症でも、自律神経のせいなのか、あるいは脳脊髄液減少症によって脳が下がることで下垂体が圧迫され、ホルモン分泌が低下するのか、原因は今後の研究にまかせますが、とにかく夜間の尿量が増えます。しかしそのことを、医師のほとんどは知らないと思います。
こどもの夜尿症について
番組では、小学2年生のこどもの、毎晩のおねしょに困っているお父さんが、対策として、「練る時にオムツをはく。」「寝る2時間前から水分を控え、寝る直前にトイレに行く。」「夜10時に就寝」ということをしているそうです。しかし、朝になると「オムツはおしっこでパンパン、時には漏れて布団もぐっしょり」だそうで、本人もとても気にしているそうです。防水シーツを何重にもひいて寝がえりをうっても漏れても大丈夫なようにひいてもそれでも布団にシミができてしまうことがあった。」そうです。
医師の説明によると、「水分をとるとだいたい飲んで2時間後ぐらいからおしっこになってくるので(2時間前から水分を控えるのは)すばらしい。そこまでやってもなぜおしっこの量が多く、オムツがパンパンになってしまうのかというと、おしっこの量は抗利尿ホルモンという尿量を少なくするホルモン、夜尿のあるこどもたちの7割ぐらいは、夜間、抗利尿ホルモンの出方があまり多くないのでどうしても夜間多尿になってしまう。もうひとつは寝ている間にどんどん膀胱におしっこがたまってくるが、完全にたまる前にちょびちょびと漏れてしまう起きている時だったら、トイレに行こうと頭にシグナルがいくが、寝ている間にはなかなかシグナルがいきにくい。」からだそうです。
夜尿症の治療法
①薬の服用
・おしっこの量を減らす薬の服用・膀胱の働きを調節する薬の服用
②アラーム療法
・下着にセンサーをつけるとおしっこが漏れた瞬間にアラームが鳴る。その音でこどもが目覚めおしっこを我慢することで次第にぼうこうにおしっこをためられるようになる。というもの。
大友先生も「夜尿があるとだいたいあまりよく眠れていない。よく眠れるようになってくると、ホルモンの出方のサイクルがちゃんと出来上がってくる。何か嫌なことがあって寝たりすると、あまりよくない。寝る前には叱らない方がいい。叱る時は時間を選びましょうねと外来では親御さんに話しています。初診で患者が来た時に、適切な治療方法が見つかると、だいたい平均1年半ぐらいで夜尿が解消する。積極的に治療に踏み込むことでかなり早くに治せる。一度よくなるとあまりぶりかえしてくることはないので、年齢が早い方が苦しむ期間が少なくていいのかなと思う。」といった内容を話されていました。
旅先で子供がそそうをしたら、親は「証拠隠滅」はしないこと!
あと、余談ですが、夜尿のあるお父さんが、お泊りの時に子供が夜尿をしたら「ドライヤーで乾かしたりして」と言っているのを聞いて「それは違うでしょ。」と私は思いました。それなのに、親を傷つけまいとしてか、誰も「そういう場合はきちんとホテルの人に謝罪してクリーニング代払った方がいいかもしれませんね。」とやんわり指摘する人がいなかったのがとても残念でした。
大人も子供も同じですが、ホテルや旅館でふとんを汚したら、隠したり、ドライヤーで乾かし、見た目だけの証拠隠滅を図ったりせずに、正直に旅館やホテルの人に「そそうをして布団を汚したこと。」を申告し、ふとんクリーニング代なりきちんと支払い、謝罪するべきだと感じました。
女性の場合も、生理で布団を汚した場合も同じです。親が、そういう「証拠隠滅」をしているところを子供に診せると、こどもの大人になると、旅先でそそうをしても、きちんと申告したり謝罪しなくてもいい、隠して、チェックアウトしてしまいさえすればいい、と考える大人になってしまうと私は思います。それに、親が必死で証拠隠滅を図って、ごまかし、自分のそそうを隠し、逃げるようにホテルを出るということは、こどもの心をかえって傷つけると思いました。「間違いは誰にでもあることだから、一緒にホテルの人にあやまろう!お父さんがクリーニング代払うから、そうするとホテルの人がまた布団をキレイに洗って、次の人が使えるようにしてくれるから、大丈夫だよ。」とか言って説明する方が、よほど子供のためになるような気がしました。
まとめ
こどもを囲む親も医師も、大人の誰もが脳脊髄液減少症でも夜尿症や起立性調節障害と同じ症状が出るということを知らない場合、なかなか脳脊髄液減少症の治療に至れず、症状に長く苦しむ子がいるのではないか?と感じました。もし、夜尿症の原因が、脳脊髄液減少症が原因での抗利尿ホルモンの分泌不足が原因だったとしたら、薬物療法は根本治療にはつながらないし、アラーム療法は意味がないどころか、睡眠中に音で起こされるなんて、ただでさえ睡眠障害の症状に苦しむ脳脊髄液減少症の患者には過酷だな、と感じました。
もし、脳脊髄液減少症が原因で、夜間に抗利尿ホルモンが出にくくなっていて、それによって睡眠障害や夜尿が出ているのに、それに医師も親も大人の誰も気づかないとしたら、それもこどもがかわいそうだなと思いました。
髄液漏れでない普通の子の夜尿であっても、夜間、抗利尿ホルモンの出方がよくなくて、オムツがパンパンになるほどおしっこが出てしまい、時にはオムツからも漏れてふとんを濡らしてしまうのが、夜間の抗利尿ホルモンの出方が良くないせいことがこどもに起こりがちなら、こどもが脳脊髄液減少症になったらなおさら夜尿になりやすいかもしれません。
そもそも小児科医が脳脊髄液減少症を知りませんし、こどもの夜尿との関係性になんて気づいていませんから、受診したところで、もし原因が脳脊髄液減少症だったら、医師にも原因が気づかれないまま、対症療法だけがなされることでしょう。
脳脊髄液減少症の治療で、夜間の頻尿と多尿が治まるなんてことや、こどもの夜尿症の改善法のひとつに、ブラッドパッチ治療がある、なんて誰も考えもしないでしょう。
本当の意味でこどもを早期に助け出したいなら、症状がなんであれ、親も医師も脳脊髄液減少症の知識を持つべきだとしみじみ感じました。
とにかく、大人たちの頭の中に、脳脊髄液減少症とはどんな症状を出し、それによってどんな不都合が起きるのかが浸透しないと、こどもたちも、救われないなと感じました。
次回は今回番組で取り上げられたもうひとつの話題、起立性調節障害について書いてみます。