2020/07/04

今夜深夜1時(日付は2017年9月4日)に ドキュランドへようこそ!で「眠りの科学The Cience of Sleep」が再放送されました。
この「ドキュランドにようこそ! 」は8月17日にEテレで放送され、9月1日に、NHKBSの世界のドキュメンタリーでも放送されたものです。
THE SCIENCE OF SLEEPは 2016年に カナダの Infield Fly Productions が制作したものです。
この中で、睡眠中に脳脊髄液が、アミロイドβを洗い流すということについて解説していたので、その部分をまとめたいと思います。
私は、個人的には、「若年性アルツハイマーと診断されている人たちの中に、実は脳脊髄液減少症が原因で認知症の症状が出ている人がいるのにそれを見逃されているのではないか?」とか、
「脳脊髄液減少症の回復には睡眠がなんらかの形で関係しているのではないか?」と思っています。
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「THE SCIENCE OF SLEEP」の内容の一部
何世紀もの間、「眠り」は体を休めるための手段としてしか考えられていなかった。
しかし、人間の脳は睡眠中もはっきりとした目的をもって活動していることがわかってきた。
「睡眠中、脳は起きているときと同じくらい、あるいはそれ以上に活動的」だと言う。
世界中の研究者が眠りの秘密を解き明かそうとしている。新たな発見は私たちの生活を変えることになるかもしれない。
「眠り」が起きている間の生活全般にいかに影響を与えているのかがわかってきた。
しかし、研究者が解明できない謎が、睡眠の「生物学的機能」
神経科学者のオレゴン健康科学大学のジェフ・アイリフ博士とロチェスター大学の研究チームはアルツハイマー病発症の主な原因であるタンパク質について研究してきた。
脳内ではアミロイドβというたんぱく質が絶えず作られている。人が起きている間はその(アミロイドβの)レベルが高くなり、夜眠っている間に下がる。
その理由を突き止めるため、アイリフ博士は睡眠中の生きている脳を、非常に高性能で特殊な顕微鏡を使い、直接観察した。
アイリフ博士は、観察するのは、脳の中枢の奥深くに入り込み、細胞に栄養や酸素を供給する「血管の複雑なネットワーク」。
そこでは、まったく予想外のことが起きていた。
夜になると、脳は変化しはじめ、脳に栄養を運ぶ細胞が、縮んでいた。
アイリフ博士の研究チームは、「脳内の老廃物はいかにして排出されるのか?」という大きな謎を解く手掛かりを偶然見つけた。
体内には血管などが川のように流れていて、体を形作る数十兆個もの細胞に栄養を送り届けている。
これらの細胞は老廃物も排出する。
川ではごみは川の底に沈むが、人の体内では老廃物はリンパ管に回収され、血流に通じて肝臓などに運ばれ処理される。
しかし脳にはリンパ管がない。ではどうやって脳は老廃物を排出しているのか?
その答えは睡眠中に脳内で起きている変化にあると、アイリフ博士は考えている。
昼間、脳は、脳脊髄液と呼ばれる体液が入った袋に包まれるようにして守られている。しかし、夜間はこの袋から脳脊髄液が出てきて脳内に広がることをアイリフ博士は突き止めた。「脳脊髄液は血管をつたって脳の隅々にまでいきわたります。」と博士は言う。
アイリフ博士の研究チームはこの脳脊髄液から謎を解明する手がかりをつかんだ。
「脳を覆う脳脊髄液は、血管を通って脳の組織の間を流れながら、脳細胞の隙間にたまった老廃物の粒子をきれいに洗い流しているのです。」とアイリフ博士は言う。
番組の案内人の生化学者のジェニファー・ガーディが「昼間は(脳は)やることがたくさんあるから、(脳の)掃除は夜のまわしているわけですね?」という問いに対して、
アイリフ博士は、「ええ、しかも血管という一つのものを使って、栄養の供給、と老廃物の除去、という二つの作業の両方を行っています。このような方式を使っているのは脳だけです。いわば脳の食器洗い機です。」と述べた。
アミロイドβは脳が排出する老廃物のひとつで、アルツハイマー病の患者の脳にはこのたんぱく質が蓄積されることがわかっている。アイリフ博士が研究を始めた当初は、「なぜアミロイドβのレベルが昼間に上昇し、夜間に低下するのか」がわからなかった。
しかし、研究の結果、その理由が明らかになった。脳は睡眠中に、この危険なたんぱく質を洗い流していた。
ジェフ・アイリフ博士は「この老廃物を洗い流すシステムが働かなくなることが、アルツハイマー病の原因のひとつかもしれない。睡眠の質の低下や睡眠時間の減少はいずれも、脳内に蓄積するアミロイドβの増加と関係がある。脳が睡眠中にこれらのごみを掃除し、部屋をきれいにしていないと、アルツハイマーのような病気になる要因を作ってしまうかもしれない。」と言う。
睡眠中の脳の働きが私たちの活動のほぼすべてを支えていた。
コロラド大学 睡眠・時間生物学研究所所長の神経科学者のケン・ライド博士 は「睡眠は生きる上で非常に大切です。体のすべてに影響を及ぼします。」という。
アイリフ博士は「眠っている間の脳内の活動が、目覚めている時の脳を動かすのです。寝ている間に脳が働かなければ、起きている時に脳は力を発揮できない。」と言う。
私の感想
寝ている間に脳脊髄液が脳内にたまった老廃物アミロイドβを洗い流すなら、その肝心な脳脊髄液が漏れて減ってしまっている脳脊髄液減少症患者の脳には、アミロイドβがたまりやすいのだろうか?と考えてしまいました。
さらに、まだまだ脳脊髄液減少症の病態の存在や、患者の症状について、この日本でさえ医師にも理解されていない現状を考えると、世界中に、隠れ脳脊髄液減少症患者がいて、それらの人たちは今後、認知症を発症するリスクが高い状態に置かれているのではないか?とも考えました。
脳脊髄液減少症は、交通事故などの衝撃を受けて体のどこからか脳脊髄液が漏れるのですが、その事実を世界中の医師が知っているとは私にはとうてい思えません。
脳脊髄液減少症で症状が出ているのにもかかわらず、脳脊髄液減少症について知識がない医師に見逃され、放置され続けている潜在脳脊髄液減少症患者が世界中にまだまだいる可能性があると私は考えます。
髄液が漏れたまま放置された人たちの多くは、健常者よりもアミロイドβがたまりやすく認知症になりやすいのではないか?そのことに認知症にかかわる医師、専門家、研究者、睡眠研究者はまだ気づいていないのではないか?とも考えました。
脳脊髄液が増えすぎて起こる認知症「特発性正常圧水頭症」については、だんだんと知られつつあるようですが、脳脊髄液が減ってしまうことで記憶障害など認知機能が低下することもある、「脳脊髄液減少症」について、どれだけ世界の医師や研究者が知っているのでしょうか?
おそらく、ほとんど知られていないのが現状だと私は思っています。
脳脊髄液と睡眠、脳脊髄液の減少と睡眠、健常な人で睡眠中に洗い流されるアミロイドβの量と脳脊髄液が減少した人の脳で睡眠中に洗い流されるアミロイドβの量を比較する研究をしてほしいです。
脳脊髄液減少症の研究では先進国ともいえるであろう、日本の医師の間でも脳脊髄液減少症の認知度はまだまだですし、患者の体に起こりえる症状や、脳脊髄液が漏れて減ることでの人体への悪影響がまだまだ研究されていないと感じます。
脳脊髄液が減少すると、睡眠リズムが狂うだけでなく、質のいい睡眠がとれなくなります。悪夢の多い夢や、脳脊髄液減少症の身体症状である夜間のシビレや足のつり、尿崩症のような夜間頻尿や多尿の症状などによっても、睡眠が頻繁に中断されます。
それらの、脳にとっての脳脊髄液の減少という直接的な悪影響に加え、脳脊髄液減少症が原因でのさまざまな症状が原因での睡眠障害が、脳内で睡眠中に起こっているという「脳脊髄液がアミロイドβを洗い流す」という作用に、どう間接的な悪影響をもたらしているのかも、至急、研究者に研究していただきたいと感じました。
それがわかってくれば、脳脊髄液減少症の早期発見と早期治療が、いかにその後のその人の認知症予防にも重要なのかがわかってくるかもしれません。
そういうことがわかってくれば、もっと真剣に、脳脊髄液減少症について考える人たち、医師、研究者が世界中に増えてくるような気がします。
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