2020/07/04

昨日の「主治医が見つかる診療所」に、また睡眠負債がとりあげられて、スタンフォード大学医学部 睡眠生体リズム研究所 (Stanford Medicine Sleep/Circadian labo )の所長で、精神科の 西野精治 医学博士 が出ていました。
睡眠については、テレビでも、いろいろな医師がいろいろな考え方を披露していますが、その情報の中で私は自分に合ったもの、納得できるものを取り入れていっています。
昨日は、お昼の番組で、寝る前にカフェオレがいい、なんて言っている人がいましたが、私はそうは思わないのでそういう人の意見は私の日常には取り入れません。
今回の西野先生は、7月の末に林修先生の他局の番組でもお考えを聞いていたので、私も納得できる考え方の先生だと思い、また見てみました。同じことの繰り返しですが、また見てみたことで新たな気づきもありました。
昨夜のこの「主治医が見つかる診療所」の番組内容をメモしましたが、最後に私の考えを書きました。これは現役の医師にもぜひ伝えたい患者当事者の私の意見でもあります。
そこだけを読みたい方は、番組内容メモは飛ばして、最後の「私の感想」だけを読んでいただけたらと思います。
さて、この西野先生、最近日本でひっぱりだこのようで、先生の本は現在22万部のベストセラーだそうです。
西野博士は、睡眠に関する研究は30年前よりしていて12年前より、スタンフォード大学 睡眠生体リズム研究所 所長だそうで、「睡眠負債」研究の第一人者ですが、「ナルコレプシー」の治療の第一人者としても知られているそうです。
ナルコレプシーは「時間や場所に関係なく、耐えられない眠気が起きて眠ってしまう。」睡眠障害の一種の権威で
西野博士は、このナルコレプシーの発生メカニズムを世界ではじめて突き止めたそうです。
によると、5ページに
ヒトのナルコレプシー患者についても、2000 年に はその髄液中でオレキシン値が低値ないし測定限界以下であることが Nishino ら によって、患者の死後脳でオレキシン前駆物質の mRNA の転写が行われておらず、 視床下部にあるオレキシンニューロンが脱落していることが Thannickal らによっ て、それぞれ明らかにされた。
とあります。
この「nisinoら」が西野先生のことなのでしょう。
「2000年に西野先生らが、ナルコレプシー患者の脳脊髄液中でオレキシン値が低いないし、測定限界以下」であることを突き止めたということでしょう。しかしそのナルコレプシーについては、
sponsored link
睡眠負債とは
最新医学で生まれた概念が「睡眠負債」であり、西野博士によると、
「日本では睡眠不足とよく言うんですけど、アメリカでは、特にスタンフォード大学では、睡眠負債(SLEEP DEBT)という事をよく使う。不足だったらすぐに返せるイメージがあるが、負債の場合は知らないうちにどんどん溜まっていくから1日や2日で返せないようなイメージで非常に怖い事。(借金みたいに)知らないうちに利息がついて首がまわらなくなるような事」知らないうちにどんどん睡眠不足が積み重なっていろいろな病気の発症リスク、がん、認知症、生活習慣病、そういうことの元になる。それで最近特に注目されている。
100か国の睡眠時間の調査をしたところ、一番睡眠時間が長かったのが、オランダの8時間12分、次いで2位がニュージーランドの8時間10分、3位がフランスの8時間8分で、日本は99位でシンガポールと同じ7時間24分で最下位だそうです。(2016 アメリカのミシガン大学がインターネットを使って調べたデータより算出)
西野博士によると日本人の40%もの人が睡眠負債の可能性があるそうです。
睡眠負債は、がん、認知症、高血圧、心筋梗塞、糖尿病などの命を脅かす病気の引き金を引く恐れもあることがわかってきた。
では、どう解決するかというと、西野医師によると
効率よく質のよい睡眠をとる、それしかない
とのことです。
効率よく質のよい最高の睡眠をとるポイント
・眠りはじめの最初の90分でしっかり眠る。
・入浴は寝る2時間前に入る。
・夜にトマトやきゅうり、パイナップルや、すいかを食べる。(体を冷やすものを食べると深部体温を下げる)
最高の睡眠を得るために
眠りはじめの90分がもっとも大事
成長ホルモンが最初の90分で70%~80%が分泌される。
眠りはじめの90分を逃すと成長ホルモンが十分に分泌されなくなる。いくら寝て疲れがとれない。
最初の90分をしっかり眠るために
眠りと覚醒は表裏一体。
最高の睡眠の準備は朝からはじめる。その日の朝にしっかり目を覚ます。
西野博士の生活習慣では、
① 朝太陽の光を浴びる。体内時計をリセットする。太陽に当たるのは1分程度でもOK
② 朝の軽い運動は覚醒のためによい。西野博士は毎日 自転車で通勤、家から10分から15分
③ 午後の習慣、コーヒーは午後2時まで。夜に覚醒するリスクを下げるため。
④ 夜の体温は睡眠に影響を与える。手足の温度を上げる、体の内部の温度を下げる、
深部体温と皮膚温度の縮まるほどその差が小さくなった時に寝やすい。入浴すると、体温が一度上がると下がる性質がある。そのため、お風呂から出て90分後に寝る。たとえば11時に寝る場合、9時にお風呂に入って、入浴後一時間半ほどリラックスして、11時に寝る。トマト きゅうり 夕食時にトマトやきゅうり、パイナップルやすいかを食べると深部体温を下げる。
寝る直前にスマートフォンなど脳を興奮させるものは見ない。暑さ寒さが気にならないように寝室の温度を快適にする。
睡眠負債チェック
① 最近 朝の目覚めが悪くなった。
② 最近 夜の寝つきが悪くなった。
③ 昼間に強い眠気を感じることが増えた。
④ 夜中に何度も起きてしまうようになった。
⑤ ちょっとしたことでイライラする。
⑥ 休日は普段より2時間以上長く寝てしまう。
1つでも当てはまれば睡眠負債の可能性があり、
0個は 問題なし
1~2個 軽度の睡眠負債
3~4個 中度の睡眠負債
5~6個 重症の睡眠負債がすでにためこんでいる可能性
睡眠時間と肥満の関係
・睡眠時間が短い女性は太りやすい。
調査で特に女性で短時間睡眠の人のBMIが高くなっていることがわかっている。
サンディエゴ大学による研究で、女性63万6095人の睡眠時間とBMI[BMI=体重(㎏)÷(身長(m)×身長(m))]を調べたところ
睡眠時間が短くなるほど、肥満とされるBMI値25を超える割合が高くなっていた。
(※私の見た感想ですが、示されたグラフを見ると、10時間以上寝る人もBMI値を超える率が4時間睡眠の人と同じくらいに私には見えました。
BMI値が25を超えるのは、10時間以上眠る人と、5時間以下の人で多いようです。特に睡眠時間が3時間以下だとBMI値が26を超え、27にグラフの値が迫って見えました。)
睡眠とホルモンの関係
西野博士によると、
「眠らないと摂食を抑制するようなホルモン(レプチンという物質)がそれがあまり出ない、逆に食欲を増進するグレリンという物質が多く分泌される。」そうです。
すると食べたい気持ちが強くなり、ついつい食べる量が増えて、その結果太ってしまうようです。
睡眠とホルモンの関係について、番組のレギュラー出演者の医師が興味深いことを話していました。
循環器内科の秋津嘉男医師(この先生、たびたび新鮮な視点で医学のお話をしてくださるので私は好きです。)
によると、
「睡眠とホルモンは非常に重要な関係であり、ホルモンの中枢のコントロールセンターは脳の視床下部と下垂体にある。睡眠負債がたまっている状態になると、脳のコンデションが良くないので、ホルモンバランスが非常に崩れやすい。成長ホルモンが大事な時にでない。成長ホルモンは成長だけでなく、糖代謝、いろいろな糖質の代謝に影響しているので、これが太る原因になる。
心療内科医の姫野友美 医師の意見は「眠らないと太るだけじゃなく細胞の再生も悪くなるから、お肌も荒れる、抜け毛、循環が悪くなるのでむくみがきやすくなりその結果体重が増えやすい。」とのこと。
姫野医師の本
乳腺外科・形成外科の南雲吉則医師のご意見は、「寝汗をかくのは、成長ホルモンが出て脂肪を燃焼してくれている。肌とか粘膜も再生し肌を若々しくし、昼間の間の日焼けしても色素が回収されるので(良い睡眠)は美白効果もある。寝ている間に日焼けも治り色が白くなる。)
眠らない人は認知症になりやすい
アルツハイマー型認知症は脳の中にアミロイドβという物質が排泄されずにたまり発症する。
西野博士によると、「起きている間にはいろいろな物質が産生されて、役割が終われば、分解されて排泄する必要がある。それを効率よくするには睡眠中に行われている。たとえば、アルツハイマーの原因となる物質のアミロイドβも、眠らせないとバランスが崩れて(脳に)沈着する。
睡眠負債があるから認知症の原因になるわけではないが、(認知症の)リスクのある人には、睡眠制限の負荷が発症リスクになる可能性がある。」
十分に寝かせたマウスと、睡眠制限をしたマウスでそれぞれのアミロイドβを比較すると、十分に寝かせたマウスの脳に比べ、睡眠制限をしたマウスの脳にはアミロイドβがより多く溜まっていた。
アミロイドβは脳の活動が高い日中に多く分泌されて、睡眠中に分解されて脳から出ていくが睡眠が十分でないと分解しきれずに脳にたまってしまう。
睡眠負債は知らないうちに認知症の原因物質(アミロイドβ)もためてしまう。
睡眠と免疫
内科・リウマチ科の中山久徳医師によると、「睡眠は免疫にも深くかかわっている。NK細胞は体の中のがん細胞やウィルスをやっつけてくれる大切な働きをする。睡眠が十分でないと減ってしまう。睡眠負債が続くような状況は免疫も落ちてしまい、さまざまな病気になりやすくなってしまう。」という。
NK細胞は睡眠中に活発に働き、睡眠負債がNK細胞の働きが低下してしまうそうです。
「睡眠時無呼吸症候群は、頻回に睡眠中に呼吸が止まって覚醒反応が起こる。10秒止まるのが1回と数えるが、1時間15回以上、中には60回、毎分首をしめられているような状態。」
睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に呼吸が何度も止まってしまう病気。呼吸が止まるたびに本来休んでいるはずの脳や体が覚醒状態になるためいくら寝ても疲れが取れない。酸素不足で 脳や心臓に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの発症リスクも高くなる。アメリカの追跡調査では重症の睡眠時無呼吸症候群の人が放置されると8年後には約40%が亡くなってしまうというデータも出ている。
私の感想
私は脳脊髄液減少症で、日中の耐え難い眠気でところかまわず眠ってしまったことがあります。過眠症のように日中9時間も眠っていた時期もありました。
脳脊髄液減少症では、過眠という睡眠障害もでます。それれはまるで「ナルコレプシー」のようです。
ナルコレプシーについては、all about の記事によると、
情動脱力発作を伴う典型的なナルコレプシー患者さんの約90%で、脳脊髄液中のたんぱく質の1つである「オレキシンA」の濃度が低いことが知られています。オレキシン神経は、脳の中で覚醒系の神経ネットワークや筋肉の働きをコントロールする神経ネットワークと深い関係があります。このことからナルコレプシーは、オレキシンの濃度が低いためオレキシン神経の働きが障害され、睡眠発作や情動脱力発作を起こすのではないかと考えられています。
とあります。脳脊髄液中のたんぱく質の一つである「オレキシンA」の濃度が低いとナルコレプシーになり情動脱力発作を起こす率が90%というのなら、もし、脳脊髄液自体がどんどん漏れている体では、脳のまわりの脳脊髄液の総量自体が減っているのですから、脳脊髄液中に含まれる「オレキシンA」だって総量が減っているのではないでしょうか?
それによって、脳脊髄液減少症患者にもまるでナルコレプシーのような症状がでることは考えられないでしょうか?
調べてみると、「髄液オレキシンが異常低値で重度の過眠症を呈した筋強直性ジストロフィーの1例」「古くて新しい巣症状 : 視床下部と過眠症状 : オレキシン神経系とナルコレプシー」といった論文はあるようですが、
脳脊髄液減少症患者の過眠症の症状がある患者の髄液オレキシンの濃度や視床下部、下垂体との研究はまだないようです。
ぜひ、研究していただきたいと思います。
ナルコレプシーについて調べていると「外傷後及び脳炎などに起因するケースも見られる。」という文章まであり、「外傷後のナルコレプシー」というのが本当にあるとしたら、それは脳脊髄液減少症による過眠症状なのではないか?と非常に気になりました。
特に、ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン項目(目次)の6ページ目の下の方の
オレキシン含有神 経細胞は、視床下部外側部のみに存在するが、脳内モノアミンやヒスタミン、アセチル コリン神経系の起始核に密な投射を送り、それらの神経伝達物質の働きを介して睡眠覚 醒調整や摂食調整、エネルギー代謝調整に関与している。ナルコレプシーでは、オレキ シンが消失することでこれらの機能のバランスに不均衡が生じ、過眠症状やレム睡眠関 連症状、睡眠の分断化が出現すると考えられる。 また、ナルコレプシー以外の疾患でも髄液中のオレキシン A 濃度測定が広く行われた が、ギラン・バレー症候群やパーキンソン病の一部、頭部外傷後の二次性ナルコレプシ ーでも時に低下が認められるものの、低値(110pg/mL 未満)~検出限界以下であることは、情動脱力発作を有するナルコレプシーに極めて特異的なものと考えられている。
の部分の「頭外傷後の二次性ナルコレプシー」という言葉に、非常に「脳脊髄液減少症の過眠症」とつながるものを感じます。
外傷後過眠症、外傷後ナルコレプシーと脳脊髄液減少症との関係について、一刻も早く研究を進めていただきたいと思います。
私の症状から、脳脊髄液減少症患者でも、もしかしてオレキシン濃度が下がっているんではないか?それが過眠につながっているのではないか?と想像しています。だって脳脊髄液が漏れて減ってしまうと、重力で脳が下垂して、脳の下の方にある視床下部や下垂体部分は、脳の自重で押しつぶされた形になり、脳脊髄液が十分にあって脳脊髄液の中でのびのび広がっている脳と比べて、脳脊髄液が減少した中にいる脳では、正常に機能できなくなっているような気がしますから。
あと、秋津医師のご意見を聞いて、「脳脊髄液が減少することによって、脳が十分な髄液の中に浮かんでいられなくなり、重力の影響で位置が下がったりして、脳の置かれた環境が悪くなれば、脳のコンデションも悪くなり、ホルモンの中枢、コントロールセンタ―も正常に機能できなくなると思い増しました。
またそれにより、ホルモン障害も睡眠障害もでて、それがまた、体調不良を作りだすという悪循環にはまっていくように感じました。ホルモンの中枢のコントロールセンターは脳の視床下部と下垂体にあるので、脳脊髄液減少症になると、脳の下側にあるその部分は一番悪影響を受けるのではないか?とも感じました。
脳脊髄液減少症での症状としての睡眠障害での睡眠負債もおこり、脳脊髄液減少症と言う負荷と、症状による睡眠負債という負荷との両方が患者の体にのしかかってくるから、一度バランスを崩すと、たとえ脳脊髄液漏れを止める治療を受けたとしても、なかなか回復できないんじゃないか?とも感じました。
特に、脳脊髄液減少症というと、吐き気でやせ衰えるといった患者ばかりが目につきやすいとは思いますが、実は、私は甘いものが無性に食べたくなったり、食事後に猛烈な虚脱や眠気が出たりしていたので、なんらかのホルモン障害や糖代謝異常が起こっていたのではないか?と考えます。
秋津医師の
「脳のコンデションが良くないとホルモンバランスが非常に崩れやく、そうなると成長ホルモンが大事な時にでない。成長ホルモンは成長だけでなく、糖代謝、いろいろな糖質の代謝に影響しているので、これが太る原因になる。」という話を聞いて、
成長ホルモンがでないことと、糖代謝がうまくいかないことが、脳脊髄液減少症患者の体でも起こっていて、それが脳脊髄液減少症患者が太る原因でもあるのではないか?と思いました。
ただ単に、動けないで家にじっとしているから太るのとは違う、猛烈な食欲、特に甘いものが食べたくなる衝動を私は感じたことがあるし、その異常な食行動が、脳脊髄液漏出症のブラッドパッチ治療・アートセレブ治療などを受けるうちに、消えて、今は全くないのです。
あと、姫野医師の言葉で思い出しましたが、脳脊髄液減少症で私は脱毛も経験しています。血のめぐりが悪くなるのか半身のつめだけが伸びが悪くなったことも経験しています。脳脊髄液減少症では肩や手足などの体の異常な冷えや、かかとが異常にガサガサになるなどを経験し、あきらかに抹消の血流も悪くなると思います。免疫力も低下します。
脳脊髄液減少症患者の体での、睡眠障害との関係、成長ホルモンなどホルモン障害の有無、糖代謝異常の有無、過眠症状との関係性、オレキシンとの関係、免疫力低下、脱毛、血流、これらのことをもっと多くの医師、特に内分泌科の医師には、もっと真剣に脳脊髄液減少症に興味を持って研究していただきたいと思いました。
スタンフォード大学の西野先生には、睡眠の生体リズムを研究しているなら、睡眠研究の世界的権威なら、ぜひ、深刻な睡眠障害を引き起こし、肥満や、免疫力の低下、認知症とも無関係でないであろう脳脊髄液減少症についても研究していただきたいと切に思いました。
特に、脳内にたまるアミロイドβは、睡眠中に脳脊髄液によって洗い流されるそうですから、その脳脊髄液が減少した患者の体では、免疫力の低下によって、数々の病気になりやすいリスクが、さらに普通の睡眠負債の人より高まる気がして、研究を急いでいただきたいと思っています。