2020/07/04
ちょっと前の話ですが、8月の8日に(2017年)「たけしの家庭の医学」で誤嚥性肺炎について放送がありました。
その中で、気になったことがありました。「サブスタンスPという物質が減ると飲み込み力が低下する」という内容です。
脳脊髄液減少症患者が、ブラッドパッチ後に肺炎で亡くなったという話などを聞いたことがあるので、もしかしたら、脳脊髄液減少症が減ると、脳が重力によって下がったりするので、脳の中心部がひしゃげて、サブスタンスPが減り、それによって嚥下障害が起こるのかも?と私は思ってしまいました。
番組では、加齢と病の関係に詳しい、東北大学 老年科 名誉教授 仙台富沢病院 院長の 佐々木英忠先生が解説されていました。
先生は、30年にわたり、誤嚥性肺炎の予防や治療法の研究に心血を注いでこられたそうで、現在も、嚥下性肺疾患の診断と治療(改定版)や、成人肺炎診療ガイドライン2017の作成にも携わっているそうです。
先生によると、誤嚥性肺炎は、50代から増加しはじめ肺炎患者の20%だそうです。毎年肺炎で10万人以上が亡くなっていて肺炎自体は薬で治せるが、「飲み込み力」を完全に治す方法がないので何度も肺炎を起こしてしまうのが問題だそうです。
以下は番組メモです。
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飲み込み力チェック
① 人差し指と中指の2本をのどぼとけを上下に挟むように当てる。(人差し指が上)
② この状態で唾液を飲み込むと、のどぼとけが、いったん人差し指を越えてからもどる。これを1回とカウントし、
③ 30秒間で何回飲み込めたかチェックする。
30秒で、6回以上できればOK
5回以下なら、飲み込み力が衰えている要注意状態
飲み込み力UP物質 サブスタンスP
・サブスタンスPとは、全身の様々な神経にある神経伝達物質で、神経の中に存在していて「痛み」などの情報を脳に伝える運び屋という役割がある。
・サブスタンスPが多い人は 嚥下機能(飲み込み力)が正常で、サブスタンスPが少ない人は嚥下機能が低下していることがわかっている。
サブスタンスPの役割
人間の喉は、口から肺につながる気道と、口から胃に行く食道がある。人の喉頭蓋(気道のフタ)は人の飲み込み力に欠かせない。
喉頭蓋は気道の入り口にあるふたのようなもの。
人は呼吸をしなければいけないので、喉頭蓋は常に開いているが、ごはんを食べる時には気道のフタの喉頭蓋を閉じて、食べたものが気道に入らず食道の方に入るようになっている。
サブスタンスPは、脳とのどをつなぐ神経の中にある。
サブスタンスPの量が正常な時は、食べ物がのどの奥に来た時にその刺激をサブスタンスPが感知し、脳やせき髄に信号を送る。
すると神経反射で瞬時に気道のフタ(喉頭蓋)を閉める。それによって気管の方には食べ物は入っていかず、胃の方へ入る。
しかし、サブスタンスPが減ってしまった場合、食べ物がのどの奥に来ても、すぐに感知できないため、神経反射が落ちて、「食べ物が来た!」とすぐ情報をキャッチできず、気道のフタをすぐに閉められない。
そのため、気道のフタ(喉頭蓋)がゆっくりとしまったり、反応しなかったりして、食べ物が気道の方に入ってしまい、誤嚥が起きてしまう。
飲み込み力の低下を引き起こす無症候性脳梗塞
・中高年に多く発症し、65歳以上なら4人に1人が発症する無症候性脳梗塞。
・命にかかわるような重大な症状を引き起こすわけではなく、脳の血管の中でも特に細い血管がふさがれて起こったもの。
・壊死するのはごく小さい部分であるため、自覚症状がでることもほとんどない。
・しかし、無症候性脳梗塞は最近の研究で、誤嚥性肺炎につながる「飲み込み力が低下」を起こす原因になっていることがわかってきた。
なぜ無症候性脳梗塞で飲み込み力が低下するのか?
佐々木先生によると、無症候性脳梗塞は細い血管で起こる。細い血管は脳の中心部に近いところにある。脳の中心部はサブスタンスPの材料が作られている場所。
そのため、脳の中心部で小さな梗塞ができると、サブスタンスPの材料が減少し、その結果、サブスタンスPの量が減ってしまい、飲み込み力低下で誤嚥を起こしやすくなることがわかってきた。
人の飲み込み力に欠かせないサブスタンスPはこれを増やす方法がある。
サブスタンスPを増やすことができる食材
・唐辛子や、黒コショウ
減っているサブスタンスPを活性化して増やすのが、カプサイシンだということでした。
・カプサイシン 唐辛子の辛み成分でこの刺激性のある物質を摂取する。
・黒コショウの匂いを嗅いで嗅覚の部分から嚥下反射を正常にする。
最近の研究では、飲み込み力が落ちた人に、カプサイシンを一日4.5㎍(マイクログラム)小瓶一振りに満たない量、を摂取し続けたところ、1か月で飲み込み力が約2倍に活性化したという。
通常、カプサイシンを摂取すると、その辛味成分をのどの神経にいるサブスタンスPが感知している。
カプサイシンの刺激を増やすことで、サブスタンスPが活性化し、増加する。その結果脳への神経伝達がスムーズになり、飲み込む力もアップすると考えられる。
黒コショウについても、同様の結果が得られている。
番組では、唐辛子、黒コショウを、5日間、毎食摂取するとサブスタンスPがどのくらい増えるのか検証していました。
注意点として、むせ・せき込みの強い方、胃腸の弱い方など体調に不安のある方は少量の摂取からお試しくださいとのことでした。
75歳の飲み込み力が落ちた女性の、検証前のサブスタンスPの値は、262は検証後は、326に増えていた。
実際に飲み込み力もレントゲンで確認すると、改善前はのどのフタが下がる勢いが弱まり「ごくん」と飲み込んでも、喉頭蓋の上に食べ物が残ってしまっていたが、辛い物を5日間食べた後は、「ごくん」と飲み込んだ時、喉頭蓋が勢いよくしまり、食べ物がフタの上に残らなかった。
刺激物は体に良くないと思い控えていたそうだが、辛い刺激でサブスタンスPが活性化し、その結果、飲み込み力が2倍~4倍もアップし、誤嚥性肺炎を予防できる。
私の感想
一般社団法人 日本訪問歯科協会のホームページに、 サブスタンスPについて説明があります。
とうがらしのカプサイシンや、黒コショウの香り刺激で、サブスタンスPが活性化し、飲み込み力がUPする、という内容でした。
以来、「健康オタク」の私は、「カラオケリハビリ」に加え、意識して「辛み成分」を食べるようにしています。
最近、よく「むせ」るからです。なんとかしなければと思っていますが、地元の医師には、その症状について相談しても、あまり真剣には向き合ってもらえません。
本当に、脳脊髄液減少症の専門医が、この地元に一人でもいてくださり、こうしたさまざまな症状にも相談に乗っていただけたら、どんなに心強いかと思いますが、その整った医療支援体制がないところに住んでいるのですから、嘆いても仕方ありません。
佐々木先生のお話によると、「6年前から日本人の死因の第3位が肺炎で、毎年10万人以上が肺炎で死亡している。」そうです。
それまでは「日本人の死亡原因の第3位は脳卒中だった」そうです。
その日本人の死因第3位の肺炎の、多くは、誤嚥性肺炎だそうです。(Teramoto S,et al.JAGS Vol.56,3;577・579.による)
(この論文、筑波大学付属病院呼吸器内科、筑波大学付属病院ひたちなか社会連携教育研究センターの寺本信嗣先生の論文でしょうか?もしかして、Journal of the American Geriatrics Societyの577ページから579ページの論文でしょうか?)
健康オタクの私は、それまでも、カプサイシンといえば、味の素のサプリ(カプシエイトナチュラ)を「脂肪燃焼力を上げる目的」で摂取したりしていましたし、朝飲む味噌汁などには、必ず七味を振りかけて食べていました。
しかし、のどに刺激を与える意味でのカプサイシン摂取は、サプリですぐのどをつるりと胃に入ってしまうカプサイシンでは効果がないのですね。
辛い辛いとのどをピリピリさせながら、刺激を受けながら食べることで、サブスタンスPが増えるのですね。
七味で唐辛子を取ると、冬場は特に体が温まる感じがするし、血流にもいいのではないか?と考えてのことでしたが、まさか、「カプサイシン」が飲み込み力アップに関係するとは、この番組を見るまで知りませんでした。
七味は、以前からこまめに味噌汁やトン汁、鶏むね肉の焼き鳥風などに、よくかけて食べていたのですが、この番組を見て、あらためて七味を食べてきてよかったと思いました。
が、最近は食べていなかったので、この番組を見てからまた七味など、とうがらし成分を食べ始めました。
サブスタンスPの材料が、脳の中心部で作られていると知って、最初にも書きましたが、もしかして、脳脊髄液減少症になった人がむせやすくなるのは、脳脊髄液の減少によって、脳の中心部が重力でひしゃげるために、脳の中でサブスタンスPの材料が減ってしまい、なる物質が減っているのかも?と思いました。
また、誤嚥しやすい人が、唐辛子と黒コショウの刺激でサブスタンスPを増やし、誤嚥性肺炎を予防するのもわかるけれど、その刺激物質を気管に誤嚥したら危険だな、と思いました。
だから、カプサイシンを摂取するには、むせないような注意が必要だな、と。
黒コショウの香り刺激だけなら、食べなくても、香りをかげばいいのかな、とも考えましたが、やはり、黒コショウののどへの刺激と同時に香りもかぐことで、相乗効果があるのかもしれないから、食べるほうがいいのかな、と思いました。
佐々木先生はいろいろな本を書かれているようです。
佐々木先生が著者の一人の本
佐々木先生の看護学講座の著書
でも、たぶん、誤嚥性に詳しい呼吸器専門の先生であっても、脳脊髄液減少症でも「むせやすくなる」症状にはあまりご存知ないんだろうな、と思いました。
早く老年医学、誤嚥性肺炎にかかわる多くの医師の皆様には、高齢者に潜む脳脊髄液減少症、脳脊髄液減少症での誤嚥性肺炎の危険にも気づいていただき、研究と治療にお力を貸していただきたいと思いました。