リカ場 ~私の脳脊髄液減少症のリカバリー~

原因不明の症状が「脳脊髄液減少症」だった私が、世界中に伝えたいこと

医療現場の行動経済学

time 2018/09/03

医療現場の行動経済学

2018年9月1日の朝日新聞の「池澤春奈が薦める文庫、この新刊」の下の書評、ビジネス欄に、「医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者 大竹文雄、平井啓(編者)東洋経済新報社、2592円)」という本についてジャーナリストの勝見明さんの書評が載りました。

2542円というお値段に、ちょっと高いな~と思いましたが、その内容にとても興味を持ちました。

記事にはこう書いてありました。

医療現場での患者の意思決定には心理面からのさまざまなバイアスがかかり、合理的な選択ができるとは限らない。「医療者と患者のすれ違い」を埋めるため、人間心理を重視する行動経済学の、医療への応用研究プロジェクト成果をまとめたのが本書だ。

なかなか興味ある内容です。

私から言わせれば、医療現場での意思決定には、医師にとっても思い込みや先入観からさまざまなバイアスがかかり合理的な意思決定ができず、患者に適切な診断ができないことで、患者に誤ったことを話し、それによって、患者自身に心理面からのバイアスがかかり、合理的な選択をますますしにくくしていることがあるのではないか?と感じます。

しかし、そんな患者側からの内容は書かれていないことでしょう。

内容は医療者向けのようですから。

 

それに、この本はいったい誰が書いたのか?と興味を持ちました。

編者の二人はあくまで「編者」であって、著者ではなく、誰かが書いたその記事を、あくまで編纂しただけでしょうから。

ジャーナリストの勝見さんが書いた書評によると、

がん治療、高齢者医療など多様な応用例が紹介されるが、印象的なのは「ナッジ」(軽く肘でつつく)という手法だ。患者に働きかけて、よりよい「健康行動」へ導く。

のだそうだ。

人には利得より損失を大きく感じ、損失を避けようとする損失回避行動がある。

という。

「例えば、大腸がん検診を毎年受けてもらうにはどうしたらいいか。東京都八王子市では前年の受診者に便検査キットを自動送付する仕組みを採用。対象を2群に分け、

今年度も受診すれば来年度も送付する、

しなければ来年度は送付しない、

と2通りのメッセージをそれぞれに送った。」

そうです。

結果は

前者のメッセージは利得だが、後者は損失となり、こちらの方が受診率は高まった。

とのことです。

ちょっと文章がわかりにくかったので私なりに解釈して書くと、

つまり、昨年、市の「大腸がん検診」を受診した人たちを二つのグループに分け、

一方には、「今年も大腸がん検診を受けてくれたら、来年度も大腸がん検査キットを送りますよ。」(お得情報)と

もう一方には「今年の大腸がん検診を受けないのなら、来年度からは大腸がん検査キットは送りませんよ。」(損失情報)

と送って、その後の受診率を比較したという意味だと思います。

つまりは、「大腸がん検診を受けましょう!」という意味では同じことを言っているようですが、前者は「今年大腸がん検査キットを使用して検診を受けてくれないのなら、来年度は検査キットはまた送られてくるか送られてこないかわからない。」けれど、

後者ははっきり「今年大腸がん検診を受けないのなら、もう来年からあなたには大腸がん検査キットは送りませんよ。」と言われてしまうのだから、後者の方が、損失回避行動のために、受診率があがるのは理解できます。

私も、いつもこの商売上手な企業の「顧客の損失回避行動、誘発キャンペーン」に、まんまとはまってしまいます。

たとえば、「今なら〇月×日まで20%off」とか、「期間限定、今だけ」などという言葉に、ついつい購入してしまうタイプの客です。だから、その患者の行動もごく当たり前だと感じます。

書評はこう締めくくられていました。

医療者向けの本だが、医療者を売り手、患者を顧客と置き換えると顧客の購買行動に適用できる。

自分が患者になった際の意思決定の仕方の参考にもなる。

と。

昔は、医師は威張っていた。(現在でも威張っていて患者を見下している医師もいるが・・・)

だから昔は、自分が医療サービスを売り、患者という顧客をいかにして捉えるか?を考える医師は少なかったように思います。

でも今は違います。医師は患者を「顧客」として捉えないと、個人での経営者としては生き残れない時代だと思います。

「自分が患者になった際の意思決定の参考になる。」との最後の文章が気になってしかたありません。

行動経済学を学んだ患者が、『医師を「ナッジする(軽く肘でつっつく)」ように、医師に自分の希望や考え、自分の集めた情報などを提示して、医師に働きかけ、医師をよりよい「診断治療行動」へ導く。』ことも、患者が自分の意思決定をしていく上で、大切で必須の行動だと私は思います。

けれど、それが医師にとってはあまり心地いいことではなく、「生意気な患者、自分で決めてくる困った患者、ネット情報うのみの患者」と嫌がられることの方が多いのが現状でしょう。

本当に患者に働きかけて健康行動に導きたいのなら、医療者側も患者から「ナッジ」されることを恐れたり拒否したり、毛嫌いしてはいけないし、ともに「ナッジ」試合ながらよりよい「健康行動」にともに進む覚悟が必要だと私は思います。

「ナッジ」は医療者から、患者への一方方向ではなく、患者から医師への「ナッジ」もあってよく、双方向性であるべきだと私は考えます。

 

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自己紹介

lily

脳脊髄液減少症のサバイバーです。私が生きているうちに「原因不明」「異常なし」「精神的なもの」とされたり、何かすでに別の病名がついている人たちの中に、脳脊髄液減少症が隠れている可能性について、広く社会に伝えたいと思っています。

「脳脊髄液減少症を知っていますか」

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